わたしの中の『資本論』

*働きながら、『資本論』を勉強しています。

「最終的には生活保護がある」発言で見えた1%の側の人間の気持ち

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炊き出し会場から足早に去って行く若い女性 ……負けないで!


炊き出しに若い女性の姿も!

 いつだったか報道で、炊き出し会場から足早に去っていく女性の後ろ姿が映し出されました。解雇されて、住むところも追い出されたのじゃないか、と思いました。彼女の後ろ姿は、何度も何度もためらって、ありったけの勇気をふり絞って、やっと弁当や飲み物等が入った袋に手を出したのではないか、とわたしは想像しました。

 わたしの契約は、今月の3月までです。4月から3ヵ月再契約の予定ですが、彼女は、明日のわたしかもしれない、と思えるのです……。

 

首相の「最終的には生活保護があります」発言の根っ子にあるものは?

 今年の1月下旬、「最終的には生活保護があります」、と菅首相は言いました。このコロナ禍で、非正規労働者の失業、女性の貧困、そしてみずから命を絶つ人がふえています。首相が言う「最終的」とは、どういう状態のことを指すのでしょうか? 炊き出しの列に並ぶホームレスの人たちの状態よりももっとひどい状態のことなのでしょうか? 

 自公政権は、コロナで生活困窮者が増大し、自殺者がどんどん出ているというのに、「最終的」に「あります」という生活保護費を昨年の10月に、また減額しました。生活保護制度は、憲法第25条の理念に基づいて「生活に困っている人々に最低限度の生活を保障するとともに、その人たちが自分の力で生活していけるように援助すること」、というものではなかったのでしょうか? 2012年のお笑い芸人の方へのバッシングを機に、翌年から3年かけて最高10%の生活保護費の削減が行われました。そして、2018年から2020年の3年間で、ひとり暮らしの高齢者や子どもの多い世帯を中心に、利用世帯の67%が減額になりました。

 誰が考えても、憲法第25条で言うところの「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、のその値段が、大きく下がっています。

 しかも、その生活保護は、プライドがずたずたにされる「扶養照会」が親類縁者に送られたり、預金や貯金高を調査して、残金が明日の暮らしが立たないことが証明されたのち、やっとこさ受けられることになります。これが、最後の公助の姿……。

 

2013年から2015年分の保護費の減額は違法! 大阪地裁の判決

 2月22日、2013年から2015年の生活保護費基準の引き下げは、「消費物価指数よりも著しく大きい下落率を基に改定率を決めており、統計などの客観的な数値との合理的関連性を欠いた」、と大阪地裁判事は判断し、生活保護受給者の訴えを認める判決を下しました。

 裁判長によれば、政府は、物価が下落したとする根拠を、石油製品や食料などが大幅に値上がりした2008年を起点にして、その後の3年間の物価下落率を反映させたとのことです。また、物価下落率の算定根拠とされた厚生労働省の指数には、生活保護世帯では支出割合が低いテレビやパソコンなどの大幅な値下がりが反映されていたそうです。

 つまり、生活保護費は、厚労大臣が裁量によって決めて良いことになっているけれど、そんなでたらめな「根拠」で勝手に下げるのは、「裁量権」の乱用である、ということ。大阪地裁判決は、政府の判断に間違いはないとした昨年の名古屋地裁判決と大違いです。

 生活保護費の引き下げをめぐって全国で訴訟が起こされていますが、引き下げを違法として取り消す判決が出されたのは、はじめてとのことです。

 

大阪府内全12市が控訴!

 先の大阪地裁判決を不服とした大阪府内の全自治体(12市)が、判決を不服として3月5日控訴しました。

 この判決が確定すると、厚労大臣は、2013年にさかのぼって、減額した保護費を返還しなければなりません。そうなったら大変と、12市が一致団結して、攻勢に出てきました。

 この判決が確定すると、生活保護基準と連動しているさまざまな社会保障制度に影響が出てきます。

 

1%の側にたつ首相の発言!

 あっ、そうそう、首相は、生活保護の意義を認めていらっしゃいましたね。でも、所詮、生活保護費は、〈死なない程度に食えりゃぁ~いいんだろ!〉ということなんだ、とはっきり見えてきました。

 

でも、なんでこういとも簡単に、労働者は首を切られるのでしょうか?

 マルクスは、『資本論』の中で次のように言っています。

 「資本制的生産は、商品の生産であるばかりでなく、本質的には剰余価値の生産である。労働者は、自分のためにでなく資本のために生産する。……彼は、剰余価値を生産しなければならない。資本家のために剰余価値を生産する労働者、または資本の自己増殖に役立つ労働者だけが生産的である。」

 だから、資本家は、自分の都合で、労働者をいつでも簡単に解雇する、ということなのでしょう。労働者の立場は、弱い‼ なぜなら、生活手段を得るために売ることができるものは、自分の労働力しかないからです。

 わたしの希望する社会は、社会保障などがなくても、みんなが安心して暮らせる社会です。

(2021.3.17)