わたしの中の『資本論』

*働きながら、『資本論』を勉強しています。

「会計年度任用職員制度」は、いったい誰が得をするの?? (*その2)

 私は、雨上がりのある晴れた日の午後に、久しぶりに裕さんと待ち合わせをしました。

 裕さんの顔色は、あまり良くありませんでした。私は、心配して、「顔色が良くないけど、仕事が忙しいの?」、と聞いてみました。

 すると、裕さんは首を振って、同僚のことが心配なのだ、と話してくれました。

 裕さんの話では、違う課の会計年度任用職員のふたりが、今年の3月はじめに、「話が違う!」と課の庶務担当と人事課に噛みついた、とのこと。そのふたりは、超ベテランの元臨時職員でした。今年の2月には、週2日で、1年間の約束だったのに、3月になったら「4月・5月の2ヶ月で勘弁してほしい」、と係長から言われ、約束が違う! と庶務担当と人事課に抗議したのでした。

 すごいね! 頑張ったね、と私がふたりの勇気を称えると、裕さんは、ひとつため息をついてこう言いました。

 「そお、頑張りすぎちゃったの、結果的には1年間働けることになったんだけど、わがままをいったのよ」、と裕さんは弱々しく応えました。「彼女たちったら、窓口にも出たくない、電話もとらないって言ったのよ」、と続けました。「あれ? 裕さんは窓口にも出てるし、電話にも出ているんだよね」、と私が念を押すと、裕さんは頷きました。

 「そんなこと、今までやったことなんかないからできない、って係長にいったのよ。係長は、1年働けるって口約束した手前、ふたりに押されちゃって、窓口にも出なくていいし、電話もとらないでいいっていうことになっちゃったの」、と裕さんはぼそっと話してくれました。課が違うから、今頃になって噂を耳にしたとのこと。

 私が、裕さんに「それじゃぁ、そのふたりは、来年の契約は危ないね」というと、裕さんは「本当にそうなんだよね。だって、常勤さんたちが、『あのふたり、来年度はないね、素直な若い子がいいよ』って話しているんだって」、と返事をしました。

 私はやりきれない気持ちになりました。「会計年度任用職員制度」とは、合法的に雇止めができる制度なのだと、そのふたりが気づいていないからです。臨時職員の頃から、そのふたりは、窓口にも出ないし、電話もとらなかったそうです。それがずっと通ってきたから、今度も大丈夫と思っていたのでしょうが、よその自治体だったら、即首になっていたかもしれません。何しろ今度の制度は、4月から1か月間は、実は試用期間であり、その期間の勤務状態を自治体当局が判断して首にすることができるのだからです。このことは、裕さんも知りませんでした。

 私は、この制度の反労働者性に苛立ちを覚えましたが、この制度がなくならないうちは、労働者たちは、不本意ながら、注意しなければならない、と裕さんと話しました。

 裕さんは、胸のつかえが少しはとれたかのようでしたが、「組合は、何もしてくれない」、と悔やんでいました。

 私は、仕事上でも互いに協力し合って、「会計年度任用職員」だけでなく、正規職員も職場で働くみんなが団結して、要求を勝ち取れるようにしなくちゃね、そのために裕さんも頑張ろうよ、と言って励ましました。