わたしの中の『資本論』

*働きながら、『資本論』を勉強しています。

原子力政策の大転換と軍備増強にNO!!

 福島第一原発大事故から12年目の3月11日、「原発を最大限活用する」という岸田政権の軍備増強と一体化して行われる原子力政策の大転換に反対するために、東京電力本社前と日本原子力発電前の抗議集会に参加しました。

 2月28日、政府は、「原子力基本法」の「改正」を行い、「原子力発電を活用して電力の安定供給や脱炭素社会の実現に貢献すること」を、初めて「国の責務」と位置づける法案を閣議決定しました。福島第一原発事故のあと、政府が閣議決定してきた「エネルギー基本計画」では、将来的に原発への依存度を可能な限り低減していく方向性が示されていました。しかし、政府は、「2050年の脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給のため」と称して「将来にわたって持続的に原子力を活用する」として、原子力政策を大きく方向転換しました。吉田所長が「東日本が崩壊する!」と叫んだあの福島第一原発事故から12年、事故の教訓はなんら「原子力ムラ」の住人達には響かなかったことがわかり、悔しい限りです。

 

政府による原子力政策の大転換のポイントは、次のふたつ

 ①原発の運転期間を最長60年と定められているものを、実質的に60年を超えた運転ができるようにする

 ②新設・増設・建て替えは想定していない、としてきたものを、廃炉となる原発の建て替えを念頭に、次世代型原子炉の開発・建設を進める

 つまり、新たな原子力ムラ(=日本の中枢に巣くう原子力利益共同体のこと)の本音は、原発の運転寿命の延長と再稼働の加速です。実質的には、運転期間の上限撤廃も視野に入っている、といえます。

 この政府の原子力政策の大転換は、ロシアとウクライナの戦争およびそれに伴う火力発電の「燃料費の値上げによるエネルギー供給不足」を〝口実〟にしたものであり、「原子力緊急事態宣言」は解除の見通しもたたないまま、福島第一原発事故などあたかもなかったかのような暴挙です。

 *さて、わたしが〝口実〟と表現したその理由は、「燃料費の値上げによるエネルギー供給不足」というのは嘘だからです。

 資源エネルギー庁の「天然ガスLNG在庫動向」に、「2023年1月25日に経済産業省が発表した「発電用LNGの在庫状況」によると、大手電力事業者の1月22日時点のLNG在庫は約257万トンであった。2022年1月末比では約77万トン、過去5年間の1月末平均を90万トン上回っている。」と記されているからです。発電用LNGは不足していません。

 また、日経新聞(2023年3月1日付)は、「発電用燃料に使う石炭(一般炭)の国際価格が急落している。日本が主に使うオーストラリア産は2月下旬に1トン200ドルを下回り、ウクライナ侵攻前の水準に戻った。欧州の天然ガス不足への懸念が後退し需給が緩んだことが背景にある。電力各社が申請した電力料金の値上げ幅の圧縮につながる可能性がある。」と報じています。燃料費は値下げしています。

 と、いうことは、政府の主張はつまり「原発を最大限活用する」ための〝口実〟でしかない、ということです。しかし、マスコミの多くがこのことを伝えていません。

 

規制委員会が閣議決定の内容を認める決定を急がされた理由

 岸田首相は、今年5月の広島でのG7議長国として、脱炭素経済をぶち上げるためにGX(グリーントランスフォーメーション=緑への転換)関連法案において、原発の運転を優先させたのです。そして、福島第一原発事故以前には原発を規制する立場でありながら原発推進経産省の下に置かれていた「原子力安全・保安院」――その反省にふまえて独立機関として設置されたはずの原子力規制委員会は、ひとりの反対意見を切り捨て、異例の多数決で、閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」の内容を認めることを決定しました。政府による、最長60年という運転期間の上限は維持しつつ、規制委員会による審査などで停止した期間を除外し、その分を追加的に延長できるようにする方針を認めるか否かは、極めて重要な問題ですが、わずか4ヵ月の議論でした。なぜ、結論を急いだのでしょうか?

 規制委員会の山中委員長が「法案のデッドライン(締め切り)があるので、やむをえなかった」と記者団に語ったのは、G7を見据えて、今国会に法案提出したい政府の意向に歩調を合わせた為、とマスコミは報じています。

 しかし、この原発政策の大転換を盛り込んだ「GX関連法案」の国会への提出を急がせたのは、昨年7月に行われた〝GX実行会議〟です。この構成メンバーには首相、経産省相などの大臣はもちろんのことですが、電機関連会社社長、そして経団連の十倉会長がいます。この経団連が昨年5月17日に『GXに向けて』という提言を公表しています。

 「経済社会の変革=GXが不可欠」としてGXを「成長戦略の柱」に位置付けています。そして、その中心に掲げているのが「エネルギー供給構造の転換」として原子力の「既存設備の最大限の活用」です。その具体的な表現が、①原発の運転期間の60年超えの延長、②廃炉となる原発の建て替えを念頭に、次世代型原子炉の開発・建設を進める―― ということなのです。

 つまり、政府が、GX会議の決定内容を閣議決定とした「GX関連法案」の内容を認める決定を規制委員会に急がせたのは、独占資本家たちの日本経済の再生のためという意向にそったため、といえます。政府の「基本方針」のなかには、原子力について「エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い電源」とされ、「将来にわたって持続的に原子力を活用する」と明記されていますが、その文言は経団連の提言の表現内容そのものです。

 さらに、驚くこととして、このGX実行会議の構成メンバーには、「連合」の芳野会長が加わっているのです。確かに、「連合」には、電機連合、電力総連が傘下に入っていますが、まさにこのGX実行会議は、政労資が一体化して、原発核燃料サイクルを推進していくものである、といえます。

 

規制委員会の独立性の破綻

 さらに、今回の法律の「改正」によって、現在、原則40年、最長60年とされている原発の運転期間に関する定めは、これまでの原子炉等規制法から原発を推進する経済産業省が所管する法令(電気事業法)に移される見通しです。原子炉等規制法(※原子力規制委員会が所管する法律)から運転期間の規定をなくすということは、何を意味するのでしょうか? 規制委員会の山中委員長は、「運転期間は政策判断で考えることで、規制委員会として意見を申し述べる立場ではない」、と記者会見で発言しています。

 山中委員長の発言は、原発の運転期間は、政府の「政策判断」でいくらでも老朽原発を稼働できる、ということを示していると思います。つまり、規制委員会は、「三条委員会」であることをやめ、経済産業省の下で科学者たちが集まって、脱炭素社会の実現などに向けて、原発の最大限の活用を図る政府方針について、原発の運転寿命の延長と再稼働が、あたかも科学的に根拠のあることであるかのように国民に示すことが使命である、という機関に変えられたということです。原子力規制委員会は、ふたたび経産省と一体化したことを自ら衆目に表明したのだ、といえます。そもそも規制委員会は、原発そのものに反対はしていません。あくまでも原発の稼働コストを抑えて、老朽原発をギリギリまで稼働していくために、大甘の「規制基準」に適合しているか否かを審査する、というだけの機関です。その「規制基準」は、もはやただの紙切れとしてなってしまった、ということです。

 *「三条委員会」は、一般に行政委員会とよばれ、府省の大臣などからの指揮や監督を受けず、独立して権限を行使することができる合議制の機関。国の行政機関の名称や機構などを定めた国家行政組織法第3条に規定されているため、三条委員会とよばれる。第3条では、府と省を内閣の行政事務を行う組織とし、その外局として、委員会と庁を置くことを規定している。三条委員会は庁と同格の行政機関であり、高い独立性を保つために予算や人事を自ら決定し、独自に規則や告示を制定することができ、それを命令、公表する権限が与えられている。

 

汚染水の海洋放出に反対!

 政府は、福島県漁連たちとの約束(※政府と東電は、2015年、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と表明)を反故にして、放射能汚染水を「処理水」と言い繕って今春か夏にもトリチウムの濃度を海水で薄めて汚染水の海洋投棄を既成事実化しようとしています。

 しかし、2年前には今春としていたものが、地元の漁業者だけでなく全国の漁業協同組合が猛反対しているため、実施が延期されています。

政府と東電は、春から夏に汚染水の海洋放出を始める計画ですが、保管中の処理水の7割は放出基準を満たしていないため、ALPSで再び浄化処理しなければならない、とのことです。処理に伴う廃棄物問題が解決できないまま、放出への準備ばかりが進んでいる状態です。政府は全漁連の要望に応じる形で、水産物の販路拡大の支援や風評被害で需要が落ち込んだ場合などに支援のための基金を設けた、といいますが、漁業で生計を立てていた以前の生活は、もどってはきません。彼らが願うのは、原発事故前と同様に大漁を目指して海に出て自分の力で稼ぐ、そんな当たり前の漁業の姿を取り戻すことです。

 全漁連は「このこと(=支援のための基金を設けたこと)のみで漁業者の理解が得られるものではなく、全国の漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることは変わるものではない」、と怒っています。わたしも同じ気持ちです!

 

そもそもトリチウムは、薄めれば、政府や東電の言うように健康被害がないものなのか? 

 分子生物学者の河田昌東氏は、「トリチウム放射線のエネルギーが低いためにその影響が過小評価されがちだが、ベータ線被曝だけでなく、生体分子の構成成分の破壊を通じて、他の放射性物質とは全く異なる生物への影響もたらすことが大きな問題である。トリチウムの海洋放出は、政府の言うような単なる風評被害ではなく実害が起こる。」と警鐘を鳴らしています。実際に、子宮胎児への影響の報告があるとのことです。

 政府(資源エネルギー庁)や東電のHPの説明では、要は量の問題で、何の心配もないかのように記載されています。まことに恐ろしい!

 なお、「原子力基本法」の「改正」については、今後、そのデタラメ性をブログに掲載していきたいと思います。